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2011.03.07up
進化続くNYコレクション 立体演出・ネット連携深める
 2011–12年秋冬ニューヨーク・コレクション(2月10~17日、以下NYコレ)はファッションウィークの様変わりを印象づけた。ランウェイショー不要論がささやかれる中、演出や運営手法に新アイデアが持ち込まれ、コレクション進化の方向を指し示した。


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 前回から会場が文化施設エリアのリンカーンセンターへ移ったNYコレは場所だけではなく、運営の面でも新たな一歩を踏み出した。リアルとネットの融合が進んだのがその1つ。ランウェイショーのネット公開はもはや常識となり、コレクション会場はオープンの度を増した。


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 「MONCLER Grenoble(モンクレール グルノーブル)」のプレゼンテーション会場はマンハッタン最大のターミナル、グランド・セントラル駅。新作アイテムで全身を包んだ大勢のモデルが駅構内でひたすら踊り続けるという斬新な演出で来場者を驚かせた。


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MONCLER Grenoble 2011-12年秋冬NYコレクション



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MONCLER Grenoble 2011-12年秋冬NYコレクション



 ランウェイショーではモデルが一瞬で通り過ぎる上、決まったパターンのウォーキングしか見られない。でも、様々なコーディネートを凝らした複数のモデルが群舞するこのプレゼンテーションでは、いろいろな動きや角度での見栄えをチェックしやすい。


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MONCLER Grenoble 2011-12年秋冬NYコレクション



 空間をダイナミックに使えるのも、こういったプレゼンテーションのいいところ。踊り手の人数がどんどんふくれあがり、最後は駅構内全体を巻き込んだ大パフォーマンスに。こんなエキサイティングな演出が可能なのも、オープンスペースなればこそ。さらに、その映像をネット配信することによって、無限の広がりが生まれた。


 初のNYコレ公認モバイルアプリも登場した。ファッション検索サイト「ShopStyle(ショップスタイル)」はNYコレ関連のスケジュールや画像、デザイナープロフィル、イベント情報などを、専用アプリ内で提供した(iPhoneやiPad向け)。お気に入りアイテムをその場でメール送信したり、SNSで紹介、ツイッターでつぶやくといったコミュニティー機能も用意され、会場に入れない一般のファッション好きにもNYコレの雰囲気を分かち合う場となった。


 ウェブへの積極姿勢はブロガーの手厚い扱いにもうかがえた。例えば、NYコレ期間中に華々しく開催された、「bloglovin' AWARDS 2011」はユーザー投票でNo.1ブロガーを決めるアワード。ファッションの伝道者としてブロガーを高く位置付ける試みだ。


 Scott Schuman(スコット・シューマン)氏の「The Sartorialist」が「ベスト・ストリート・スタイル」の最優秀賞に選ばれた。日本でもブックマークしているファッショニスタが多い、フィリピン出身の若きファッションブロガー、Bryanboy(ブライアンボーイ)も会場に姿を見せた。米国サンディエゴ在住の有名な読者モデル、Rumi Neely(ルミ・ニーリー)の「FashionToast」が「ブロガー・オブザイヤー」を受賞した。日本からも有力ブロガーが参加していた。


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スコット・シューマン氏



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ブライアンボーイ氏



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ルミ・ニーリー氏



 そもそもNYコレの事務局や参加各ブランド自体がブロガーに寛容だ。発信力の高いブロガーには、フロントローに近い席を用意するし、着席からの写真撮影にもおとがめなし。ファッションの魅力を伝えてくれる新たな担い手の手を縛るような無粋はしない。運営サイドのオープンマインドが、ソーシャルメディアの伝達力を増幅。NYコレのネット上での存在感を増している。


 既存のメディアもブログやソーシャルメディアに積極的だ。有力ファッション誌もエディターは自分の席から熱心に写真を撮って、自前のブログやソーシャルメディアにアップするのが当たり前の仕事になった。主要ブランドでもデザイナー自身がフェイスブックでファンと交流したり、ブランドの公式フェイスブックページでコレクション情報を発信するようになっている。ヨーロッパに比べてソーシャルメディアへの順応スピードが速い米国は、ファッションの世界でもネット活用が一足先を行っているようだ。


 ネットと融合したものづくりも始まった。「DEREK LAM(デレク ラム)」は米国のECサイト「eBay(イーベイ)」と組んで、消費者がオンライン投票した結果次第で商品化を決めるプロジェクトを発表した。発表された16型のうち、気に入ったデザインに投票。票数が多かった順に上位5型が実際に発売される。


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DEREK LAM × eBay



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DEREK LAM × eBay



 プライスが125~295米ドルと、コレクションラインの「DEREK LAM」よりずっと手頃な設定になるのも、eBayとの大量販売が決まっているから。ラグジュアリーブランドがポジションを崩さないで、販売チャネルを広げ、リーズナブル価格帯の商品を提供する新手法と言える。しかもあらかじめ消費者のニーズを織り込み済みだから、売れ残るリスクは低い。こんなチャレンジのお披露目タイミングとしてもNYコレは機能しているのだ。


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DEREK LAM × eBay



 今回から初めてランウェイショーを開いたのは、新鋭ながら固定ファンの多い「Band of Outsiders(バンド・オブ・アウトサイダーズ)」。以前から展示会形式で参加していたが、レディースブランド「Boy. by Band of Outsiders(ボーイ・バイ・バンド オブアウトサイダーズ)」とともにランウェイデビューを果たした。日本からは東京コレクションでの発表を続けてきた「N.HOOLYWOOD(エヌ.ハリウッド)」が初参加した。逆に大御所の「Michael Kors(マイケル コース)」は30周年の節目のショーを開催。既に50年を超える歴史を持つNYコレに一段の厚みが出てきたことを証明した。


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Band of Outsiders 2011-12年秋冬NYコレクション



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Band of Outsiders 2011-12年秋冬NYコレクション



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Michael Kors 2011-12年秋冬NYコレクション



 世界各地からファッション関係者が訪れるこの時期を狙って、新ショップを開くブランドは珍しくない。NYモードのトップランナーとなった「Alexander Wang(アレキサンダー ワン)」は初の直営旗艦店をソーホー地区にオープンするタイミングを、今回のNYコレに合わせた。メンズのファーストライン立ち上げを控えて、NYを代表するデザイナーに成長したワン氏は自らの世界観を伝える足場を地元マンハッタンに築いた。


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Alexander Wang 旗艦店



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Alexander Wang 旗艦店



 レディースからスタートして、メンズにもフィールドを広げたワン氏とは逆に、メンズで圧倒的な支持を得て、レディースに乗り出したのが、アメリカントラッドに大復活をもたらした「THOM BROWNE(トム ブラウン)」。今回のNYコレ期間中に初のレディースショーを開いた。尼さん(シスター)姿のモデルがずらりと並び、神父さん姿の男性がガウンとかぶり物を脱がせると、僧服の下からコレクション作品が現れるという劇的な演出。高級ライン「BLACK FLEECE BY Brooks Brothers」で、米国の老舗ブランド「Brooks Brothers(ブルックス ブラザーズ)」に新風を吹き込んだトムらしい憎いデビューを飾った。


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THOM BROWNE WOMEN'S 2011-12年秋冬NYコレクション



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THOM BROWNE WOMEN'S 2011-12年秋冬NYコレクション



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トム・ブラウン氏



 観客席側で最大の変化は中国人バイヤーの急増だ。主要ブランドが一番売り込みたいターゲットとあって、中国勢はどこのショーでもフロントロー近辺を用意されていた。ランウェイ上でも中国を意識したと見えるディテール、色使いが増え、国際的なマネーの勢い次第で風向きの変わるファッションビジネスの現実をうかがわせた。


 変わらない事の1つに、社会的責任との向き合い方が挙げられる。コレクション開幕前日には米国エイズ研究財団(American Foundation for AIDS Research、amfAR)主催のパーティーが開かれ、翌日からのコレクション発表を控えたデザイナーやモデルらが大勢、ゲストとして出席した。エイズ撲滅運動への貢献を讃えて表彰された3人の中には、Diane von Furstenburg(ダイアン・フォン・ファステンバーグ)氏の名前もあった。


 NYコレ初日には心臓病予防の啓発を女性に呼び掛ける「レッドドレス」ファッションショーも催された。シンボルとなっている真っ赤なドレスを着た著名人が予防の大切さを訴え掛けた。ファッションの祭典を、単なるお披露目・商談の場に終わらせてしまわないで、そこに集まる注目や関心を、社会的に意義のある目的にも生かそうという態度は、NYコレそのものの価値を高める上でもプラスに働いている。


 最終日の2月17日には日本のファッションをテーマに据えたショーがFIT(ファッション工科大学)で開かれた。FITの博物館では昨年から日本ファッションを特集した展示会が長期開催されている。ショーではアニメにインスパイアされた服や、いわゆる「ゴスロリ」系のフリルフルなドレスなどが発表され、世界に広がる「カワイイ」ファッションを印象づけた。


 総じて言えるのは、NYコレは必ずしもランウェイ上がすべてではなく、ファッション関係者の熱意やビジネスの集合体であるという事だ。この期間中のマンハッタンはファッションが最大の関心事となり、街は華やいだムードに包まれる。デザイナーのクリエーションと、それを取り巻くビジネス、文化、メディアの望ましいケミストリー(化学反応)がNYコレを単なるファッションショーの羅列ではない特別な磁場にしているようだ。


(ファッションジャーナリスト 宮田理江)

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