3/20~3/28 バンタンデザイン研究所ヴィジュアル学科フォトグラファ専攻 修了写真展「14」
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2010.02.15up
バーバリー躍進のキーマン クリストファー・ベイリーの軌跡
モードシーンの流れを方向付けるデザイナーは実はそう多くない。その1人が、「BURBERRY PRORSUM(バーバリー プローサム)」のデザインを2001年から任されている俊英、クリストファー・ベイリー(Christopher Bailey)氏だ。1971年生まれでまだ30代とは思えない圧倒的な実績を持つベイリー氏はデザイナーという枠を超えて、ブランドマネジメント分野でも称賛を浴びている。2006年に150周年を祝った、世界有数の老舗ブランド「バーバリー」に、新鮮な表情をもたらしたベイリー氏は今や、「バーバリー」そのものを支える存在だ。 25周年を迎えたロンドン・ファッションウィーク。2010年春夏コレクション最大の華は「バーバリー プローサム」のロンドン初参加だった。ブランド立ち上げ以来、主にミラノでコレクションを発表してきたが、初めてロンドンでウィメンズのランウェイショーを開き、母国に華々しく里帰りした。「バーバリー プローサム」は2010-11年秋冬シーズンもウィメンズをロンドンで披露する計画だという。 ブランド誕生の地に、誇りと愛着を保ち続けている点も「バーバリー」を特別なブランドにしている。英国発というオリジナリティーに一貫性が高いのは、ブレないブランドというイメージを支える。ベイリー氏自身も英国人だ。 パリコレに参加していても、フランス人ではないデザイナーが任されているブランドはあるし、資本や企業グループが入り混じって国籍不詳になっているブランドもある。しかし、「バーバリー」はブランド名を聞いた瞬間、誰もが「英国」を連想するぐらい、ブリティッシュの薫りが染み込んでいる。選別の目を一段と厳しくした消費者がブランドの生い立ちを重んじるようになっている今、「バーバリー」の首尾一貫は頼もしく映る。絶妙のタイミングでロンドンへの「里帰り」を決めたベイリー氏や経営陣の判断は見事だ。 ベイリー氏は2009年、「バーバリー」のチーフ・クリエイティブ・オフィサー(CCO)に就いた。日本ではまだ聞き慣れないこの肩書の意味するものは大きい。2001年にクリエイティブ・ディレクターに就任して以来、ベイリー氏は「バーバリー プローサム」のデザインやキャンペーンなどを統括してきたが、このCCO就任は「バーバリー プローサム」単体ではなく、すべての「バーバリー」ブランドのデザインをはじめ、キャンペーン、企業イメージなどを総合的にディレクションするという、もう一段上の立場になったことを意味する。ブランド戦略のキーマンであり、例えば本社の建物、ウェブサイトの展開などもCCOの仕事だ。 ビッグメゾンの場合、かつてはデザインだけを頼まれる「雇われデザイナー」が珍しくなかった。しかし、「グッチ」の再建を果たしたトム・フォード氏が宣伝戦略やブランドコントロールまで任される「クリエイティブ・ディレクター」というポジションをデザイナー側にたぐり寄せ、デザイナーの地位は高まった。 だが、ベイリー氏のCCO就任はフォード氏の功績の上を行くと見える。そもそも「バーバリー」にはこれまでCCO職はなく、ベイリー氏に存分に腕を振るってもらうべく、役職自体が新しく設けられた。「グッチ」復活を成し遂げながらも、最終的には経営者側と衝突し、メゾンを追われたフォード氏とは違い、ベイリー氏はメゾン側との好関係を維持している点も、その業績を裏打ちしている。 CCOに就いたベイリー氏はこれまで以上にその才能を多面的に発揮しつつある。例えば、旗艦店の「バーバリー表参道」は2009年9月に全面リニューアルオープンしインポートのみをとり扱う店舗となったが、ショップのデザインは、ベイリー氏の手になるコンセプトに基づいている。おなじみの「バーバリー」チェック柄をアレンジした外観もベイリー氏のアイデアだ。 英国を象徴するブランドに新たな息吹をもたらした功績は、英国王室が認めるまでになった。ベイリー氏は2009年、大英帝国勲章(MBE)を受勲した。ザ・ビートルズのメンバーも受けた名誉ある勲章だ。 一貫性があり、揺らがないビジョンがベイリー氏のクリエーションを支える。「バーバリー」のような伝統を持つブランドを担うには、欠かせない才能と言える。 「バーバリー」の歴史は1856年、創業者のトーマス・バーバリー氏がロンドンで開いた洋服店に始まる。雨がしみ込まない特殊加工を施したコートで人気を呼び、第1次世界大戦時にはトレンチコートが英国陸海軍に正式採用された。人類初の南極点到達を成し遂げた探検隊が「バーバリー」のコートを着ていたこともブランドの信頼感を世界に広めた。映画「カサブランカ」で主演俳優のハンフリー・ボガードがトレンチコートを着たことで、「バーバリー」のトレンチコートは伝説のアイテムとなった。映画「ティファニーで朝食を」でオードリー・ヘプバーンが着たトレンチコートも「バーバリー」だった。 長い歴史を持つ「バーバリー」がコレクションラインとして、従来からあるブランド「バーバリー ロンドン」に加えて、「バーバリー プローサム」を投入したのは、1999年春夏シーズンから。まずウィメンズを立ち上げ、2000年春夏からはメンズもスタート。最初のクリエイティブディレクターは「ジル・サンダー」のアシスタントデザイナーだったロベルト・メニケッティ氏。現在のベイリー氏はその後を引き継いで、「バーバリー プローサム」を世界のトレンドセッターに押し上げた。 アーカイブ(過去の作品群)への敬意は、歴史の長いブランドを任されたデザイナーに必須の条件だが、ベイリー氏のリスペクトは際立って深い。2009-10年秋冬ミラノ・メンズコレクションではブランドのアイコン的存在のチェック柄を鮮やかに復活させた。チェック柄は英国服飾文化の象徴でもあり、二重の意味で「バーバリー」と縁が深い。 ロンドンで披露された2010年春夏コレクションでは、ブランドのシンボル的アイテムのトレンチコートを大胆にアレンジしたミニトレンチで喝采を浴びた。トレンチのフォルムを生かしつつ、大小のドレープを寄せたり、袖を絞ったりと、ディテールに深みを持たせ、ドレスのようなコートスタイルに仕上げた。 BURBERRY PRORSUM 2010年春夏ロンドンコレクション BURBERRY PRORSUM 2010年春夏ロンドンコレクション BURBERRY PRORSUM 2010年春夏ロンドンコレクション BURBERRY PRORSUM 2010年春夏ロンドンコレクション BURBERRY PRORSUM 2010年春夏ロンドンコレクション BURBERRY PRORSUM 2010年春夏ロンドンコレクション 英国の伝統的ライフスタイルもモチーフに取り込んでいる。2009年春夏コレクションでは「ガーデンガール」をテーマに選び、英国の庭園で過ごすようなナチュラル志向のロマンティックをランウェイに持ち込んだ。ぼかし染めのコート、スモーキーパステルの色調などにはエコ意識もうかがえる。英国紳士のたしなみであるガーデニングをウィメンズの装いに融合させた試みは英国文化を丸ごと着込むような着想だ。 「紳士」のイメージが定着している「バーバリー」だけに、ウィメンズのコレクションラインはその伝統的なカラーを大事にしつつ、フェミニンでモードな新スタイルを提案していくという難しい取り組みが求められている。ベイリー氏がコレクションのたびにこの高いハードルをクリアーしていることは驚嘆に値する。 英国のイングランド北部、ヨークシャー地方で1971年、ベイリー氏は生まれた。英国ウェストミンスター大学のファッションデザイン学科を卒業した後、さらにアート・デザイン系では世界最高峰とされるロンドンの芸術学校、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号を得た。このしっかりした学識と研究がクリエーションのバックボーンとなっているのは間違いないだろう。 欧州と米国にわたってキャリアを積んだ。ニューヨークではパワーウーマンに顧客の多い「Donna Karan(ダナ キャラン)」のアトリエで腕を磨き、96年からは「グッチ」のウィメンズウエア部門でシニアデザイナーを務めた。この頃の「グッチ」のクリエイティブ・ディレクター、フォード氏の下での仕事は貴重な経験になったはずだ。「バーバリー プローサム」のクリエイティブ・ディレクターに抜擢されたのは、「グッチ」を離れた後の事だ。 年齢からかけ離れた受賞歴を誇る。ブリティッシュファッションアワードで2005年、大賞に当たる最優秀デザイナー賞を受賞。2007、08年には2年連続で最優秀メンズウェアデザイナー賞を受けている。そして、2009年にも再び最優秀デザイナー賞に輝いた。英国を代表するデザイナーという評価を裏付ける受賞だ。 デザイン以外でもベイリー氏の手腕は冴えわたる。世界の主要都市のストリートでトレンチコートを着た人を撮影した写真を集めたサイト、アート・オブ・ザ・トレンチ(www.artofthetrench.com)を2009年秋にオープンしたのも、新しい試みだ。ストリートスナップがもてはやされる中、ビッグメゾンが自前でストリートフォトをネット公開するのは、極めて珍しい。このサイトではビューアーからの投稿も受け付けている。リアルな着こなしが人気を集める今、消費者の気持ちに寄り添うアプローチと見える。 FacebookやYouTube、Twitterとも連動した、トレンチコートを着る世界中の人々がストーリーやイメージを共有できる試みも先進的だ。デジタル・ルックブックの導入、ファッションショーのライブストリーミングなど、デジタル表現の取り入れも「バーバリー」は進めている。2010年メンズ秋冬コレクションもライブ配信され、ベイリー氏自身も登場した。 広告分野もCCOの大事な仕事。2010年春夏の広告キャンペーンには、映画「ハリーポッター」シリーズのハーマイオニー役で知られる女優エマ・ワトソンと弟のアレックス・ワトソンの姉弟を起用した。清楚な顔立ちで気品ある容姿のエマは先シーズンに引き続いての起用となる。ベイリー氏は巧みなキャンペーンで、顧客層をこれまで以上に厚くして、比較的若いファンを増やし続けている。近年の景気落ち込みで、ラグジュアリーブランドが軒並み打撃を受ける中、「バーバリー」が比較的早く業績を回復したのは、「バーバリー」が有する分厚い顧客層ゆえだ。「日経消費ウオッチャー」の2009年調査でも「好きな衣料品ブランド」で「バーバリー」は堂々の第1位に評価されている。 若手クリエイターを支援する「バーバリー財団」の設立を働きかけ、自ら理事を務めている。そう遠くない昔、自分も将来を期待される新人だったことを忘れず、後進の育成を手助けする点もファッション界から広く尊敬を集める理由の1つだろう。 「プローサム」とは、ラテン語で「前進」を意味する。「バーバリー」のレーベルデザインで、甲胄に身を固めた騎士が掲げる旗に書かれた言葉だ。150年を超える「バーバリー」の伝統に、ベイリー氏はデザインの拍車をかけた。現代最高のモード騎士を得て、「バーバリー」の前進はさらに加速していく。 クリストファー・ベイリー氏 (ファッションジャーナリスト 宮田理江) Burberry International www.burberry.com www.facebook.com/burberry www.twitter.com/burberry www.youtube.com/burberry |
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